論文発表「高効率な蛍光タンパク質導入法の開発」

当チームは、BRCの遺伝子材料開発室と共同で、ヒトiPS細胞などに対する高効率な蛍光タンパク質導入法を開発しました。

本研究成果は、ヒトiPS細胞を用いた細胞・発生生物学的研究、創薬におけるタンパク質発現を指標とした薬剤候補評価系の構築、再生医療に向けた細胞製造法の確立に貢献すると期待できます。

生きた細胞の状態を可視化するために、指標(マーカー)となる重要な遺伝子発現を、蛍光または発光タンパク質(レポーター)を用いて可視化する研究開発が広く行われています。特にゲノムに直接蛍光タンパク質を組み込むこと(ノックイン)は非常に有効ですが、その効率は低くとどまっています。今回、研究チームは、うまく組み込まれなかった細胞を除去するシステムを開発することにより、ヒトiPS細胞の高効率なノックインを達成するとともに、数々のマーカー遺伝子の蛍光レポーターiPS細胞株群を作製しました。

本研究は、科学雑誌『Cell Reports Methods』オンライン版(12月11日付:日本時間12月12日)に掲載されました。

さらにこの内容を理研のwebサイトからプレスリリースを出しています。

チーム紹介の動画公開

理化学研究所筑波地区一般公開2023の一環で当チームの紹介動画が作成され、
youtube上で公開されています。
作成してくださった株式会社ロフトワーク様、ありがとうございました!

研修生の修了と入学

2022年度末で研修生の天野晋作さん(東京理科大学大学院薬学研究科)が修士課程を無事に修了し、製薬関連企業に就職することになりました。今後のご活躍を祈っています!

2023年度からはLi “Rio” RuiさんとGe Ningxinさんがともに筑波大学大学院ライフイノベーション学位プログラム修士課程で、当研究室に研修生として所属することになりました。一緒に研究を頑張っていきましょう!

第96回日本組織培養学会大会を開催

注目

このたび,日本組織培養学会 第 96 回大会を,つくば国際会議場(茨城県つくば市)において 2024 年 6 月 27 日(木)・28 日(金) の2日間で開催する運びとなりました。

この大会では「細胞ができること,培養でできること」をテーマとし,基礎生物学から創薬,物質生産,再生医療,食品加工,と広範に広がった領域をカバーする細胞・組織培養について,細胞が持つ可能性をこの機に科学的に捉え直し,今後,培養技術によってさらに何を成し遂げることができるのか,活発なディスカッションが行われる大会にしたいと考えております。本大会での学びや気づきが皆様の今後の研究開発の糧になりますと大変嬉しく思います。

 翌6月29日(土)には関連する一般公開のシンポジウムやつくば研究機関の見学ツアーも開催する予定です。本大会およびこれらのイベントへのご参加がみなさまの記憶に残る快い時間となるよう尽力して参りますので,どうか奮ってご参加いただければありがたいです。

 一般演題・奨励賞・EPA (English Presentation Award)対象演題の募集について

  • 一般演題登録:大会webサイトの「演題募集」のページから指定様式の抄録テンプレート(Wordファイル)をダウンロードして,演題名,発表者氏名,所属,抄録本文などを入力してください。さらに上記のページ上で必要項目を入力し,この抄録ファイルをアップロードして送信してください。詳細は大会webサイトをご確認ください。
     一般演題は口演とポスターを予定しておりますが,会場のホールが一つのみで大会時間が限られているため,口演発表については,抄録内容を査読した上で演題数を制限させていただく可能性があります。口演で採択されなかった演題は,ポスター発表をしていただくことになります。何卒,ご理解,ご容赦ください。
    演題登録期限は2月29日(木)を予定しています。お早めに登録をお願いいたします。
  • 奨励賞対象演題募集:奨励賞対象演題に応募される方は,指定の申請書類を2024年1月31日(水)までに提出してください。詳細は当学会webサイトおよび大会webサイトをご確認ください。
  • EPA対象演題募集:EPA対象演題に応募される方は,通常の演題登録に加えて,大会長宛に所定の履歴書を提出する必要があります。詳細は 当学会webサイトおよび大会webサイトをご確認ください。

協賛企業の募集
日本組織培養学会第96回大会では,大会の開催に協賛していただける企業を募集しております。募集内容としては,ランチョンセミナー,ブース展示,抄録集広告,大会ホームページバナー広告,会場スクリーン広告,寄附金,があります。内容に関しましては,大会長(大会事務局)や運営事務局にお気軽にご相談ください。詳細は,大会webサイトの企業協賛募集ページ(https://jtca96.com/sponsored.html)の趣意書をご確認ください。多くの企業の皆様に,積極的に協賛していただけますと,非常にありがたく存じます。

 

ウィルソン病患者由来iPS細胞の肝細胞モデル

ウィルソン病はATP7B遺伝子の変異によって起こり、体内に不要な銅が蓄積するために、肝臓や脳などを中心に全身性の障害が生じる疾患です。本研究成果は、ウィルソン病や肝機能障害の新たな治療法開発につながると期待できます。

今回、共同研究グループは、患者から樹立したiPS細胞を肝細胞に分化させることで、ウィルソン病の病態を培養皿中で再現しました。さらに、ゲノム編集を用いて、ATP7B遺伝子の変異を正常な配列へと修正したり、逆にATP7B遺伝子を変異させたりすることで、ATP7B遺伝子の詳細な機能解析を可能にしました。これらのiPS細胞に由来する肝細胞において、レチノイドという物質がウィルソン病の症状を抑制することも見いだしました。

Song D, Takahashi G, Zheng YW, Matsuo-Takasaki M, Li J, Takami M, An Y, Hemmi
Y, Miharada N, Fujioka T, Noguchi M, Nakajima T, Saito MK, Nakamura Y, Oda T,
Miyaoka Y, Hayashi Y. Retinoids rescue ceruloplasmin secretion and alleviate
oxidative stress in Wilson’s disease-specific hepatocytes. Hum Mol Genet. 2022
Apr 7:ddac080. doi: 10.1093/hmg/ddac080. Epub ahead of print. PMID: 35388883.

この研究に関するプレスリリースを理化学研究所、東京都医学総合研究所、筑波大学から行いました。

22q11.2欠失症候群の患者特異的iPS細胞の作製

染色体異常の難病の一つである22q11.2欠失(DiGeorge)症候群の患者様からいただいた体細胞からiPS細胞を作りました。

DiGeorge症候群(22q11.2欠失症候群、またはCATCH22症候群)は、染色体22q11.2の欠失により、多臓器の発育不全をきたす症候群です。我々は、4名の患者からDiGeorge症候群特異的なヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を作製しました。22q11.2欠失に起因するDiGeorge症候群の分子病態はほとんど分かっていないため、これらの細胞資源は疾患表現型の再現やDiGeorge症候群の新しい治療法の開発に有用です。これからもこのiPS細胞を使って研究を進めていきます。

Shimizu T, Matsuo-Takasaki M, Luijkx D, Takami M, Arai Y, Noguchi M, Nakamura
Y, Hayata T, Saito MK, Hayashi Y. Generation of human induced pluripotent stem
cell lines derived from four DiGeorge syndrome patients with 22q11.2 deletion.
Stem Cell Res. 2022 May;61:102744. doi: 10.1016/j.scr.2022.102744. Epub 2022 Mar 9. PMID: 35292424.

次世代リプログラミング因子KLF4改変体の論文を発表

iPS細胞作製の際に必要なリプログラミング因子の一つであるKLF4タンパク質において、DNAと直接相互作用するアミノ酸残基の改変体を多数作製しました。その中から「KLF4 L507A改変体(ヒトKLF4の507番目のアミノ酸残基ロイシンをアラニンに置換したもの)」を用いてiPS細胞を作製したところ、迅速、かつ高効率で、高品質なiPS細胞株を樹立できることが分かりました。

Borisova E, Nishimura K, An Y, Takami M, Li J, Song D, Matsuo-Takasaki M, Luijkx D, Aizawa S, Kuno A, Sugihara E, Sato T, Yumoto F, Terada T, Hisatake K, Hayashi Y. Structurally-discovered KLF4 variants accelerate and stabilize reprogramming to pluripotency. iScience. 2021 Dec 21:103525. doi.org/10.1016/j.isci.2021.103525

また、本論文発表に合わせて、理化学研究所と筑波大学からプレスリリースをいたしました。

次世代リプログラミング因子KLF4改変体の開発
-iPS細胞をより高効率・高品質に作製-

共著者である共同研究者の方々
ありがとうございました!

筆頭著者のJenny、おめでとうございます!

本研究成果は、従来の天然型タンパク質よりも優れたリプログラミング能を持つ「次世代リプログラミング因子」を開発した初めての例です。今後、他のリプログラミング因子においても同様な機能増強型の改変体が開発されると考えられます。その延長線上では、より効率よく高品質のiPS細胞を容易に作製できることから、患者自身から作ったiPS細胞(My iPS細胞)を用いた自家移植医療の実現に貢献すると期待できます。

また、本研究成果に関する特許のライセンスを受けて事業化を希望する企業を募集しています。

本研究の概要の図



JAG1遺伝子欠損iPS細胞の開発に関する論文を発表

Notch経路のリガンドであり、アラジール症候群の原因遺伝子として知られるJAG1 (Jagged-1)遺伝子に対して、ゲノム編集技術で欠損(INDEL)したiPS細胞株を開発しました。

Song D, Zheng YW, Hemmi Y, An Y, Noguchi M, Nakamura Y, Oda T, Hayashi Y.
Generation of human induced pluripotent stem cell lines carrying homozygous JAG1
deletions. Stem Cell Res. 2021 Oct 26;57:102588. doi: 10.1016/j.scr.2021.102588.
Epub ahead of print. PMID: 34736037.

共著者である共同研究者の方々
ありがとうございました!

筆頭著者の宋さん、おめでとうございます!

今後はこのiPS細胞株を用いた病態モデルの開発や創薬に向けて、頑張っていきます!

博士研究員の伊藤秀矩さんが加入

博士研究員として、伊藤秀矩さんが加入しました。
伊藤さんは、奈良先端科学技術大学院大学を修了しています。
これまでに、マウスES細胞を用いた血管分化とそのデバイス開発の研究や
白血病モデルマウスを用いた遺伝子解析の研究など、
非常に優れた研究成果を挙げています。
今後、更なる活躍を期待します!