2. ゲノム編集iPS細胞株の作製

理研BRC細胞材料開発室が細胞バンク事業として提供しているiPS細胞株について、
その利活用を促進すべく、加工iPS細胞を作製し、理研BRC細胞材料開発室から提供する。
作製方法と種類は以下の通りである。

  • 原因遺伝子が特定されている疾患のiPS細胞に関して、
    ゲノム編集技術等を用いて原因遺伝子を正常遺伝子に置換し、
    比較対照細胞を作製する(isogenic control cells と呼ばれている)。
  • 原因遺伝子が特定されている疾患であり、
    寄託細胞数(由来患者数)が少ない疾患に関して、
    ゲノム編集技術を用いて正常遺伝子を病因遺伝子に置換し、
    疾患特異的iPS細胞を人工的に作製する。
    元となる健常者由来iPS細胞としては、
    理研細胞バンクが提供している健常者由来iPS細胞を用いる。
  • 分化をより簡便に検出できるよう、
    組織特異的及び/又は分化段階特異的プロモーターによって
    マーカー(蛍光タンパク質等)を発現する加工iPS細胞を作製する。

研究例

ISL1遺伝子へのtdTomato蛍光タンパク質レポーターiPS細胞の作製

ISL1 は、LIM/homeodomain ファミリーに属する転写因子をコードしている。このタンパク質は、運動ニューロン、膵臓、二次心臓形成領域の発生に中心的な役割を担っている。本研究では、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)において、ISL1遺伝子のヘテロ接合型蛍光レポーターを作製した。CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用い、2A-tdTomatoとEF1αプロモーター駆動のBleomycin耐性遺伝子を翻訳型ISL1 C末端領域にノックインした。その結果、ISL1-TEZ株は運動ニューロン分化時にtdTomatoの蛍光を示すようになった。これらのレポーターiPS細胞株は、これらの関連する細胞系の可視化と純化を可能とする (Tsukamoto et al., Stem Cell Research 2021)。