2. ゲノム編集iPS細胞株の作製

理研BRC細胞材料開発室が細胞バンク事業として提供しているiPS細胞株について、
その利活用を促進すべく、加工iPS細胞を作製し、理研BRC細胞材料開発室から提供する。
作製方法と種類は以下の通りである。

  • 原因遺伝子が特定されている疾患のiPS細胞に関して、
    ゲノム編集技術等を用いて原因遺伝子を正常遺伝子に置換し、
    比較対照細胞を作製する(isogenic control cells と呼ばれている)。
  • 原因遺伝子が特定されている疾患であり、
    寄託細胞数(由来患者数)が少ない疾患に関して、
    ゲノム編集技術を用いて正常遺伝子を病因遺伝子に置換し、
    疾患特異的iPS細胞を人工的に作製する。
    元となる健常者由来iPS細胞としては、
    理研細胞バンクが提供している健常者由来iPS細胞を用いる。
  • 分化をより簡便に検出できるよう、
    組織特異的及び/又は分化段階特異的プロモーターによって
    マーカー(蛍光タンパク質等)を発現する加工iPS細胞を作製する。

研究例

高効率な蛍光タンパク質導入法の開発

-細胞状態・細胞種を可視化するヒトiPS細胞株群を開発・整備-

生きた細胞の状態を可視化するために、指標(マーカー)となる重要な遺伝子発現を、蛍光または発光タンパク質(レポーター)を用いて可視化する研究開発が広く行われています。特にゲノムに直接蛍光タンパク質を組み込むこと(ノックイン)は非常に有効ですが、その効率は低くとどまっています。今回、研究チームは、うまく組み込まれなかった細胞を除去するシステムを開発することにより、ヒトiPS細胞の高効率なノックインを達成するとともに、数々のマーカー遺伝子の蛍光レポーターiPS細胞株群を作製しました。
本研究は、科学雑誌『Cell Reports Methods』オンライン版(2023年12月11日付)に掲載されました。
合わせて理研から日本語のプレスリリースも出ています。

本研究で開発されたDouble-tkドナーシステムの概要図

Koji Nakade, Satomi Tsukamoto, Kenichi Nakashima, Yuri An, Iori Sato, Jingyue Li, Yuzuno Shimoda, Yasuko Hemmi, Yoshihiro Miwa and Yohei Hayashi, “Efficient selection of knocked-in pluripotent stem cells using a dual cassette cellular elimination system”, Cell Reports Methods 2023, 10.1016/j.crmeth.2023.100662新規タブで開きます