5. 細胞培養、操作、解析の新たな技術開発

当チームリーダーはこれまで多能性幹細胞における新しい培養技術の開発に貢献してきた。

現在は他分野のエキスパート達と共同研究を行い、
細胞培養、操作、解析における新しい技術開発を実施している。

研究例

光応答性ポリマーを用いた培養細胞の自動高速レーザープロセシング
- 人工知能(AI)技術に基づく判別で大量・高速処理を実現 -

光応答性ポリマーの薄層を培養基材表面に導入し、培養液や細胞を直接加熱しない可視光レーザーを高速で精密に走査させ、さらに、培養ディッシュ全域の顕微鏡観察像を高速に取得する機能を備えた装置を開発した。この技術は、レーザーの照射エネルギーを光応答性ポリマー層だけで効率よく熱に変換でき、直上にある標的とする細胞への作用を最大化するとともに周辺の細胞を含む培養系全体への影響を最小限に抑えることができるため、処理速度と精度が飛躍的に向上した(図1下)。

今回開発した技術により、ヒトiPS細胞の継代培養に必要な不要細胞の判別除去や、細胞単層の細分化処理の高速自動化が実現できた。これにより、品質管理下でヒトiPS細胞からの特定細胞の大量生産が可能になり、ヒト由来細胞の本格的な活用を力強く推進することが見込まれる。今後は、さらなる細胞プロセシングのニーズに対応すべく、互いにつながった細胞培養系からの選択的な細胞回収をはじめ、さまざまな細胞操作技術を確立していく (Hayashi et al., Communications Biology 2018)。